京都新聞   窓 欄  昭和58年8月26日
 37歳

教育の原点は人間性の形成

 人はみな、生まれながらにして、平等であるべきだ。

誕生時には輝くばかりに真っ白な心のキャンパスがいつどの様にして、どんな

色に塗りつぶされてゆくのか、その責任の一部は現実の社会状況にもある。

 それにしても、青少年の非行、家庭内・校内暴力と、その実情は目を覆うものがある。

校内暴力が抑圧された生徒たちの、われわれ大人、学歴社会に対する警鐘の一つだと

すれば、単に教育の場と家庭を結ぶ線上のみならず、社会そのもののあり方

も裁かれるべきだ。

 もう二十八年も前のこと私が学童のころ、担任のU先生は成績の上下に関係なく、

学芸会の時、すべての者に平等に適役を与えた。劇は最高に盛り上がり、私はU先生の

勇気を、頼もしく思ったものだ.

 いま教育されている子供たちも、やがては社会を担う大人となる。大学や高校離れ

の兆しが見え、ある者は専修学校へと散らばる傾向が表れてきたと聞く。

 物が満ちあふれ、人間を物象化する社会や、家庭や教育の中で、”落ちこぼれ”た者

たちは孤独だ。

 二十八年前のあのクラスメートたちのかつてない生き生きとした目の輝きこそ、

人間性の形成という教育の原点に宿るものではあるまいか。