京都新聞 窓 欄 48歳
るり渓高原に心いやされて
暖冬とは言え、きりっとして冬がある。目覚めると、空気がツンと鼻をつく。
落葉も終わり、木々の枝枝は、すっかり骨だらけ。小枝を透かして、
明度の低い冬の空が広がり、雲は光乏しく、寒い季節を演じている。
昨年は盛秋の自然を満喫した。サーモンピンク、燃え上がるような緋色、
一点の濁りもないイエロー。心にしみこむ自然のカラーリストの演出を堪能した。
昨年から月一度、園部のるり渓高原にある知人のログハウスを拝借。
十一月下旬、杉木立の緑に交じって秋色の高原を、夫と二人遊んだ。
ボリュームいっぱい音楽を流しても、だれにも迷惑などかからない人気のない
山中で、夫は私を気遣ってくれた。
職場であまりにも価値観の異なるパートナーとの確執に疲れ果て、離職
したのが昨年十一月初め。混乱した精神は家族にまで猜疑心を向け、出来事は
夢にまで現れて収拾がつかなかった。ともすると現実から離れよぷとする私を、
夫が懸命に見守り続けてくれた。
るり渓から篠山を経て、周山街道へと彩色降る秋をドライブした。結婚して
これほど二人きりの日があったか。成人してゆく子供たち。もう一度二人きりの
私たち。
高原は今ごろ冬景色か。