京都新聞  窓 欄 37歳  昭和58年   


戸塚ヨットスクールを求める現実

 戸塚ヨットスクールが事実上、閉校された。情緒障害児矯正校だった当校から、多くの

逃亡者や死者をだした結果である。

 私は、この機関の在り方そのものに、全面的に賛成しているわけではない。けれど、

こういった機関が現実に、必要とされてきたのである。

「少年の町」は、フリーライターの原田幸彦氏自らが、問題児を立ち直らせた体験記である。

彼は、戸塚方式は、少年たちの恐怖心を利用しているだけで、真に立ち直れたかどうか疑問である、と

評している。

 ”少年の町”は信州の大自然の中に設けられた合宿所で、しごきや暴力は、一切使われなかった。

心を病んでいるのは、問題児だけでなく、その親たちもまたそうである。「子供たちの意識は親の

意識の一部に過ぎない」ことに、”少年の町”を通して、気付いてゆく。

 一方、戸塚ヨットにわが子を預けた母親の手記からは、家庭内暴力に追い込まれた母子の

せい惨な現状が、伝わってくる。

 ただ、原田氏は、極軽症の、初期段階の問題児に限り預かってきた。重度に心を病んでいる

少年たちというのは、相当長い間、親や教師たちに放任されてきた結果だ、といえる。

 要は親たちを除外した問題児教育は考えられない。戸塚ヨットが、真に、誠意をもって少年問題に

取り組むなら、今一度、制度を改善したうえで、問題児が現実に存在する限り再興を願う。


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